

19歳のヒデは、年上女・額子と初体験をする。ぶっきら棒だけど率直な額子に、ヒデはのめりこんでいく。しかしある日突然、額子は一方的にヒデを捨てる。ヒデは呆然としたまま大学を卒業、就職、新たな恋もするが、虚しさだけが募っていく。いつしかアルコールに頼るようになり、墜ちてゆく。一方、額子もその頃、惨い運命の中を懸命に生きていた。そして10年後、変わり果てた姿で2人は再会する。
19歳から29歳までのヒデを演じるのは、人気絶頂の成宮寛貴(「ララピポ」「ドロップ」)。初めて女性を知る戸惑いや悦びに、世の年上女性はほだされずにいられない。対照的に後半の、アルコール依存症になり、堕ちてゆくヒデの演技には鬼気迫るものがある。間違いなく本作は彼の代表作になるだろう。
原作は、芥川賞作家・絲山秋子の同名小説『ばかもの』(新潮社刊)。映像化に挑んだのは「デスノート」のヒットメイカー、名匠・金子修介監督。どん底まで墜ちる主人公の愚かさを真正面から見据え、絲山作品のもつ原始的とも言える生命力や官能をも見事に捉え、共感と愛しさを抱かせてしまう。そして最後、一抹の清涼の風を吹かせ得た。監督は「将来、希望を持てるようにしたい、という点で絲山さんと一致した」。その結果、絲山文学と金子監督のエンターテイメント性が見事にコラボレートし、稀にみる傑作が誕生した。
脚本は「プライド」でも金子監督と組んだ高橋美幸。撮影は、「蝉しぐれ」から「罪とか罰とか」「GOTH」まで、時代劇からポップな作調まで幅広く手掛ける釘宮慎治が担当。日本映画界の才能が結集した。
舞台は、東京生まれの原作者・絲山氏が5年来、居を構える群馬県・高崎市。風光明媚な田舎とは違う、どっしり現実感のあるちょっと栄えた地方都市。絲山氏によると、額子は「話し方はきついが、情に厚い」という群馬女性をイメージしているという。撮影は、白衣大観音(びゃくえだいかんのん)や達磨市など高崎市周辺から、額子の新天地・片品へ。吹割(ふきわれ)の滝、ラストシーンの渓流など、清らかで美しい自然環境は、いつまでも記憶に残る。